
今回、2月19日(水)のEPIC Storiesでは、パヴァン・スクデフが登壇。Conservation International Japanの皆さんと協力し、今回のイベントを開催しました。
「企業2020」の著者であり、TED Talkのスピーカー。肩書きには、UNEPや世界銀行のプロジェクトリーダーという偉大な姿しか見えない彼ですが、実はプライベートでの出来事、家族、自然とのふれあいなどがきっかけとなり、彼のキャリアを変えました。その彼が起こしたチェンジの「旅路」にフォーカスし、トークはすすみました。
娘と過ごす時間をきっかけ。そこから「自然」に関心を持つ
グローバルエリートとして、ドイツ銀行で世界中をまたにかけて仕事をしていたパヴァンにとって、かけがえのない時間の一つが愛する娘さんとの遊びの時間でした。彼女は自然が大好きで、よく森などに出かけて遊んでいる中で、ふと気がついたのは「自然の価値とは何だろうか」。ここからパヴァンの旅路がはじまりました。
「理論が現実を否定する、これは間違っている」
パヴァンにとってのもう一つの「きっかけ」は意外なものでした。環境問題を解決しなくてはいけないという強い思いは持ちながらも、あくまで「感情」ではなく「科学」や「論理」が彼の原動力となっていました。 彼を突き動かしていたのは物理学者としての理論と現実への疑問。物理学では、外部の影響を一切無視して事象を研究することで一つの理論を導きだします。しかし社会科学では外部性を完全に排除して理論を実証することは難しく、時に理論に固執するあまり「理論が現実を否定する」ということが起きてしまいます。 パヴァンにとって『企業を取り巻く経済理論』は、理論が現実を支配し、間違いを起こしているものとして映ります。それは、「企業2020」の中で「ブラウン経済」と呼ぶものでした。経済合理性に従い、単体での利益を追求するあまり、社会に大きな損失を生み出している「ブラウン経済」。そこから脱却し、社会に生み出す正負の影響(外部性)を内部化して「グリーン経済」の一部になる企業を増やすことを目指します。

目的を見つけよ、手段は後からついてくる
企業の行動をシステムレベルで変えていく。そんな自身の思いを実現するために、初期にどんなサポーターがいたのかという質問への答えの中で、パヴァンはガンジーの以下の言葉を引用しました。
目的を見つけよ。手段は後からついてくる。 “Find purpose, the means will follow.”
彼にとっての目的は、今の経済活動で見過ごされている価値に値段を付けて、経済社会システム全体を変えるということでした。インドで起業したときには、最初は自分の考えが受け入れられないのではないか、自分はうまくやっていけないのではないか、とおびえた瞬間もあったとのこと。でも、その時、街角の垂れ幕にあったガンディーの言葉が、彼に目的と勇気を与えたそうです。その後、最初に環境資本の評価プロジェクトに携わり、一人一人に目的を説明する中で、多くの人が仲間になり、順調にプロジェクトが振ってくるようになりました。
「やるべきことはたくさん残っている」
パヴァンとっての終着点は何かという質問について、彼の答えは「地球システムの均衡を正すまで」でした。地球システム中の物質量は一定であるが、常に違った状態で存在している。このシステムの均衡が崩れる境界線をすでに超えはじめてしまっており、今後数十年の間に手を打たないと取り返しのつかないことになる。「気候変動に温暖化、やるべきことはたくさん残っている。」社会をシステムレベルで変化しようとするパヴァンの挑戦は、これからも続きます。